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【小説】現代純文学おすすめ作品紹介

【小説】現代純文学おすすめ作品紹介

このページでは、当サイト「YOMUDAKE(ヨムダケ)」がおすすめする純文学作品を紹介しています。作品によって異なる角度から繰り広げられる結論のない物語と想い。ぜひお楽しみください。

目次

おすすめ現代文学作品

むらさきのスカートの女

むらさきのスカートの女
著者今村夏子
出版社朝日新聞出版

あらすじ

近所に住む奇妙な女を観察するわたし。この物語はそんな女に対して異常な執着心を持った「わたし」目線の一人称で描かれる。常に監視し続け、哀れみ女に近づこうとするわたし。友だちになりたい。そんな一心で、わたしはその女に手を差し伸べる・・・

ネタバレなしレビュー

自身の異常性には気づかない「わたし」を読者は奇妙に感じるはず。しかし、誰もが「わたし」になる可能性を秘めているのかもしれない・・・

スクラップ・アンド・ビルド

スクラップ・アンド・ビルド
著者羽田圭介
出版社文藝春秋

あらすじ

87歳の祖父と暮らす健斗。失業中の彼は、祖父の介護をしながら日々を過ごしている。「早う死にたか」とこぼし続ける祖父に対し、健斗は尊厳死を実現させようと計画を立てる。しかし、その計画を実行に移そうとする過程で、健斗は否応なく自分自身と向き合い始めることになる。

ネタバレなしレビュー

計画を機に肉体を鍛え上げ、弱りゆく祖父と対比して自身の強さを実感し、再び前を向こうとする。筋繊維の破壊と再生は彼の人生と重なり、介護や社会の閉塞感の中で、もがき続ける。

推し、燃ゆ

推し、燃ゆ
著者宇佐見りん
出版社河出文庫

あらすじ

何もかもが上手くいかない。高校生のあかりは、不器用に日々を生きていた。そんな彼女が心の拠り所としていたのは、アイドル・上野真幸の存在。彼を「推し」として、生活のすべてを捧げていた。ところがある日、真幸が暴力事件を起こし、炎上する。そこからあかりの世界は揺らぎ始め・・・

ネタバレなしレビュー

彼女にとって「推し」は、生きるための北極星のような存在。しかし、事件をきっかけに変化していく推し。置き去りにされるあかり。それでも続く日々。彼女にとっての「推し」とは何だったのか。残されたものは何なのか。考えずにはいられない。

嫌いなら呼ぶなよ

嫌いなら呼ぶなよ
著者綿矢りさ
出版社河出書房新社

あらすじ

全4作品が収録された短編集。私のキラキラをみんなにお裾分け – 眼帯のミニーマウス / バイト先でYouTuberを発見。私が彼を正さなければ – 神田タ / 妻の友達の家へ。そこで行われたのは不倫裁判だった – 嫌いなら呼ぶなよ / ライターと作家が喧嘩。板挟みの編集者は何を想う – 老は害で若も輩

ネタバレなしレビュー

それぞれの作品に登場する主人公たちは、皆それぞれに闇を抱えているものの、その内面は明るくポップな筆致で描かれる。一方で、彼らを取り巻く人々もまた、異なる方向にゆがみを抱えており、それぞれが異なる濃度のグラデーションのように「何か」を抱えている。その在り方には、善悪や正誤といった単純な判断を超えた面白さがある。

コンビニ人間

コンビニ人間
著者村田沙耶香
出版社文藝春秋

あらすじ

「普通の生き方」に馴染めない36歳の古倉恵子。彼女にとって、マニュアルどおりに動くことで社会の一部になれるコンビニは、唯一自分らしく生きられる場所だった。しかし結婚や就職といった「正しさ」を求める周囲の声に揺れ始める。誰のために生きるのか。「普通」とは何かを問いかける。

ネタバレなしレビュー

コンビニの中では「正しい姿」で存在できる主人公。社会からズレたようで、どこか鋭く、まっすぐな彼女に、気付けば心がざわつく。生きづらさと、どこかの誰かの「普通」に押しつぶされそうな人に読んでほしい。

鳥打ちも夜更けには

鳥打ちも夜更けには
著者金子薫
出版社河出書房新社

あらすじ

舞台は、楽園と謳われた島の架空の街。新たに着任した町長の下「鳥打ち」という職に就いた3人の青年たちは、美しい花畑と希少な蝶を守るため、日々鳥を殺めていた。だがある日、1人の青年はその職務と、この町の在り方そのものに疑念を抱き始める・・・

レビュー

「正しい」とされるものに無条件で従うことの意味、そしてそこに宿るある種の尊さ。一方で、自らの生き方や仕事に価値と存在理由を見出そうとする行為は、果たしてロマンなのか、それとも無謀なのか。

ぼくはきっとやさしい

著者町屋良平
出版社河出書房新社

あらすじ

受験を控えた冬の日、僕は机に突っ伏す冬美に恋をした。そして彼女と同じ大学へ進学する。それから、僕は海に落ちた。あまりにも無気力で、どこまでもピュアな青年・岳文(たけふみ)は、今日もまた日記に綴っていく。

レビュー

痛くてダサいのに良い。自己評価が高く純真無垢な青年。その純真さは、ときに自分にも他者にも刃を向ける。そんな彼は大人になるにつれ、思い描いていた自分と現実との乖離に苦しむ。読み終えてタイトルにある「きっと」が良い味を出していることに気付く。

蹴りたい背中

著者綿矢りさ
出版社河出書房新社

あらすじ

さびしさは鳴る。高校1年生のハツは、クラスで孤立していた。唯一の友人は別のグループに馴染み、無理に他の子と関わろうとしないハツは孤立を深めていく。そんなある日、同じく浮いた存在の「にな川」と言葉を交わす。不器用で、どこか歪な2人の関係が描かれる。

レビュー

孤立し、外敵から身を守るために研ぎ澄まされていく自意識と感覚。一方、同じような立場のはずの「にな川」は、モデルに夢中で、自意識の欠如すら感じられる。そんな彼に、主人公が抱くのは愛おしさと嫌悪感。言葉にしきれない、繊細で複雑な感情に浸れる1冊。

架空の球を追う

架空の球を追う
著者森絵都
出版社文藝春秋

あらすじ

全11作品が収録された短編集。西日が差し込むグラウンドで、野球少年を見守る母親たちは何を想う – 架空の球を追う / 桜の木の前でデジカメを構えると・・・ – チェリーブロッサム / カブトムシだって自由に生きたいでしょ?私はカブトムシを購入して森へ逃がす – 夏の森。など。

レビュー

何かを掴みかけては、すり抜けてしまいそうな・・・。そんな日常の一瞬をすくい取った作品を楽しめる。どこにでもある風景の中で、誰かの心がふっと揺れる。その小さな揺らぎに、静かに心を掴まれる。

おいしいごはんが食べられますように

著者高瀬隼子
出版社講談社

あらすじ

職場で要領よく馴染む二谷。常に周りから配慮され続ける芦川。仕事に真面目に取り組む押尾。3人の登場人物を中心に繰り広げられる人間模様は「食」を通して描かれる。みんなで食べるとおいしいのか?おいしいものは、みんな嬉しいのだろうか?

レビュー

人が求める「正しさ」に疑問を抱きながらも要領よくやり過ごす男。その疑問は手間と工程をかけた料理よりもカップ麺を好む姿に象徴される。飲み込む者・飲み込めない者・飲み込ませたい者。職場の人間関係はやがて食の在り方と重なっていく。結末にも納得。

ニムロッド

ニムロッド
著者上田岳弘
出版社講談社

あらすじ

会社で仮想通貨のマイニングを任された中本。過去のある選択に苦しむ田久保。そして中本の先輩であり、小説を書く「ニムロッド」。あらゆるものがデジタル化され、単一化していく社会の中で、人はどのように生きるべきなのか。

レビュー

無から生まれ、それに価値を見出すもの。人間を仮想通貨に重ね合わせることで浮かび上がる、存在理由と証。そして、どこかに漂う漠然とした虚無。合理的で単一化された社会のなか、人々は正解に適合しながら生きていく。では、生き方や選択に意味はあるのか。正しさを吐き出すテクノロジーの時代における、人間らしさとは。


純文学とは

純文学の定義は人によって異なるものですが、当サイト「YOMUDAKE(ヨムダケ)」では、以下のような基準で紹介しています。日々続いていく何気ない日常を描きながらも、人間の思考・思想・葛藤といった内面に深く迫っていること。

そして、作品そのものに明確な結論があるのではなく、読者が自由に意味を受け取り、解釈できる余白があること。

そうした要素を備えた作品を、純文学と捉えています。

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